キックボクシングを考える

こんにちは、Seanです。

 

最近流行りのキックボクシングについて考えてみます。

 

私はキックボクシングのトレーナーをしていますが、昔は自分自身トレーニングしていた選手でもあります。 今のキックボクシングは、私が現役だった頃からすると考えられないくらい、女性の方が増えています。

 

ダイエットとしても効果が高いと言うことで、女性の人気を集めているようですが、発端は有名モデルさんなどがはじめたのがきっかけと言われています。

では、そのキックボクシングは実際どうなのかって言うのを、選手、トレーナー両方の観点から考えてみます。

 

格闘技として考える ”キックボクシング”

 

まず格闘技としてみた場合ですが、これはもともと格闘技ですし、十分に実用性があると思います。

私は6歳からボクシングを始め、その後合気道、空手、キックボクシングと種別を変えてキックボクシングに転向していきました。

全ての格闘技をやったわけではないので断言は出来ませんが、これまでの経験から持論を述べさせて貰うと、キックボクシングは1対1の戦いでは相当強い部類に入ると思います。

具体的に、私の今までやってきた他の格闘技と比べながら以下に考えを記載していきます。

 

空手の場合

空手の場合、基本コンセプトは ”一撃必殺” であり、その名の通り一撃に自分の全てをぶつけ相手を撃破するスタイルです。

もちろん全ての空手がそうとは限りませんが、基本スタイルは一撃必殺です。

 

空手の場合

 

これは、まさに全てを一撃に賭けているため、決まればダメージは大きいですが、外した場合自分の隙も非常に大きくなり、諸刃の剣とも言えます。

 

なので、空手の達人は、相手の隙を見る洞察力と、一撃を見舞う際の踏み込みの速度が尋常ではありません。

一撃を外す事は、自分のピンチを招く事にもなるからです。

 

しかし、それはかなりの正確性と速度、パワーを求められます。

どの格闘技も相手を倒す技術を極めるには相当な修練が必須ですが、空手の場合、他の格闘技と比べてもかなりの能力が求められると私は感じています。

 

 

合気道の場合

合気道でも少し考えてみます。

合気道はそもそも ”格闘技” と言う部類に入るかもわからないのですが、護身術として婦人警官などが習得すると言う事ではかなり有名ですね。

 

合気道の場合

 

合気道にもいろいろな流派があり、内容もかなり変わってきますので、ここでは私が習っていた寺田気山先生の流派 ”流道” から見ていきます。

 

合気道の本道は ”気功術” であり、自分の中の気を練り、エネルギーとして活用、かつ、相手の力を利用して自分の力を使わずに相手を制すと言うもの。

特記するべきは相手に触れただけで投げ飛ばす究極の技 “空気投げ” 。漫画みたいで現実的ではなく信じがたい技ではありますが、実際にやられてみるとわかります。

自分と相手を “気” でつなぎ、相手の力で投げ飛ばす。 先生の説明ではこんな事を言ってましたが、この理論が正しいとしても、マスターするのに相当な修練が必要なのは言うまでもありません。

正直、ここまでの達人になれば1対1の戦いで負ける事はほとんどないでしょう。

 

ただ、私が知っている限りではこの技を使えるのは寺田気山先生ただ一人。

もちろん他の道場など探せばもっといるかも知れませんが、私の通っていた道場では、10名近い師範代を含む弟子達を含めても、この技をマスターしていたのは寺田師範ただ一人でした。

 

そう考えると、マスターすれば恐らく最強レベルの格闘技となりそうですが、一体習得に何十年かかるかわかりません。

 

相手の力を利用して制する “関節技” も数多く存在しますが、基本的にはこの関節技も気功術と組み合わせなければ実践ではほとんど役にたちそうにありません。

しかし、この関節技は 相手を十分に油断させた状態 で、一発で決めれば相手の動きを止めるには十分な効果はあります。故に護身術としてもうまく使えば有効です。

 

ボクシングの場合

今度はボクシングから見てみます。

 

ボクシングのルールで、キックが追加されたのがキックボクシング。 ボクシングとキックボクシングの違いは、ざっくり言うとキックの有無だけ、と考えて頂いて問題ないと思います。

 

 

と言うことで、ボクシングはパンチのみで相手と戦う格闘技と言う事になります。

 

このボクシングも格闘技と言う観点からみると、かなり有効だと思います。

 

パンチに特化した格闘技の為、パンチの速さは尋常ではなく、また相手のパンチを避ける技術も常人とはかけ離れています。

そして、空手と違い “一撃必殺” の概念はなく、とにかく手数を重視し、相手に隙があれば何発でもパンチを打ち込みます。

その際、速さを重視してパンチを放つ為、攻撃を外しても空手ほどの隙が生まれず、回避能力も空手家に比べると数段高いと言えそうです。

 

ボクシングは人気スポーツの為、日本でも良くテレビで放映されています。 なので、ほとんどの方がテレビで試合を見たことがあるのではないでしょうか。

このテレビで見てても選手のパンチはものすごく速く感じますが、実際に対戦していると、速いなんてものではありません。 「パンチが来る!」 と気がついた時にはもうあたっています。

 

すなわち、「来る!」と思った瞬間に避けなければパンチを貰ってしまうのです。それくらいボクサーのパンチは速いです。

 

じゃあ選手はどうやって相手のパンチを見ているかと言うと、相手のフットワークのリズムや肩の動きなどから瞬時に判断し、避ける動作に入っています。 試合などでパンチをされてもいないのに、相手が避ける動作を頻繁にしているのはこの為です。

 

こう考えると、修練を積んだボクサーは1対1の戦いでは相当有利に戦えると判断出来ます。 全く格闘技経験のない人がボクサーとやりあったら、数秒で勝負がついてもおかしくありません。

 

 

さて、そんなものすごい技をみにつけてられるボクシングですが、問題は ”足” です。

 

キックボクシングと違ってキックのルールがないので、ボクサーはキックには異常に弱いです。

 

これも私の経験からの持論ですので、全てがそうだとは断言出来ないのですが、私が以前ボクサーと対戦した時の感覚で言わせて貰うと、ボクサーはキック、特に足を狙って放つローキックに全く対応出来ません。

 

キックボクサーとボクサーがキックなしのボクシングルールで戦えば、勝負にならないほどボクサーが有利ですが、逆にキックボクシングルールで戦った場合、勝負にならないくらいキックボクサーが有利です。

 

ローキックと言っても一般の方にはあまり理解されにくいですが、ももの筋肉を狙った上から振り落とすローキックは、一発決まれば常人ならもう歩けません。 歩くどころか、立ってもいられないかも知れません。

 

ローキックがモロに入ってしまえば、ほとんどの攻撃が機能しなくなります。 なぜなら、ボクサーの最大の武器であるパンチは足のリズムで生み出すフットワークを使って繰り出しているからです。

 

以前ボクサーとキックボクシングルールでスパーリングをした時は、開始数秒でローキックが決まり、そのまま勝負がつきました。

逆に、ボクサーとボクシングルールでスパーリングをした時は、数秒とまではいきませんが、ほとんど相手のペースでの試合になり、一方的にやられたまま試合が終わった経験があります。

 

キックボクシングの場合

さて、ではキックボクシングの観点から格闘技を考えていきます。

キックボクシングでは、いわゆる「打撃」の攻撃はほとんど有効です。
(膝蹴り・肘打ちは非常に危険な技の為、場合により制限があります)

 

顔面へのパンチやキック、ボディへの攻撃、相手の足を止めるローキックはもちろん、人間の急所の1つである ”みぞおち” を狙う膝蹴りでさえもほとんどのキックボクシングルールで有効です。

パンチの攻撃力は「ボクシング」のところで書きましたが、キックボクシングの最大の武器はやはり「キック」でしょう。

腕に比べ3倍~5倍の威力があるとされています。同じキックボクサーでも、まともにキックをもらえばただではすみません。格闘技経験のないものであれば、命を落とす可能性さえあります。

 

これを踏まえると、キックボクシングは打撃系の格闘技としては相当強い部類に入ると私は思っています。

 

弱点があるとすれば 「投技」 や 「キメ技」 にまったく対応出来ない事でしょうか。

柔術や日本の柔道など、相手を掴んで投げ飛ばす、または固め技で動けなくする攻撃はキックボクシングでは全く触れないので、もし柔術の達人に腕を掴まれたら、恐らくもう終わりでしょう。

キックボクシングには膝蹴りがありますので、自分の懐に入られる事はなかなかないと思いますが、相手は「懐に入って相手をつかむ」事の達人ですから、こちらの想像を遥かに上回る速度で技をかけられるかも知れません。

あっさりやられてしまうような気もしますし、逆にそれほど苦労なく倒せるような気もします。

手合わせをした事がないので全く想像出来ませんが…

 

 

まとめ

いろいろ書きましたが、総合的に考えてキックボクシングは相当強い部類の格闘技になると私は考えています。

 

もちろん上述している通り格闘技は他にも私の経験していない柔道や柔術もありますし、その他レスリングや軍隊で教えられる総合格闘技も私はまだ未経験です。 これらの中には更に素晴らしい技術が含まれているかも知れません。

 

とはいえ、客観的にみてもキックボクシングはそれらと比べても(実際に戦っても)致命的な欠陥があるとは思えず、1対1であれば対等に渡りあえるような気もします。

 

もちろん、上記に述べたのは基本概念であって、個人差はもちろん、その道場やジムによって千差万別なので、あくまでも私の記事は参考程度にして貰えればと思います。

 

ただ、今までいろいろやったスポーツや格闘技を総合してもキックボクシングはものすごく面白いし気分が良いので、万人にオススメ出来ます。